湖南市PR 育てた苗配布へ

辛さはタカノツメの2倍――。湖南市の伝統野菜「弥平とうがらし」の認知度を上げようと、市農林振興課が市役所での「ベランダ菜園」でポット苗を育て、学校や企業に配布する計画を進めている。「いずれは市特産の農業として広めたい」との野望を胸に、まずは手のひらほどの苗から浸透を図ろうと挑戦を始めた。(河村真司)
およそ3世代以上にわたり、地域ならではの方法で栽培されている野菜を伝統野菜という。「近江の伝統野菜」として認定されている同市の産品は、「弥平とうがらし」「下田なす」の2品。お墨付きはないものの「東寺献上ごぼう」「朝国しょうが」も同市のみで生産される逸品だ。
弥平とうがらしは、150年以上前に下田地区の木田弥平氏が美濃(岐阜県)から持ち帰った苗を初めて栽培し、その名が付いたと伝わる。実の長さは約5センチ。オレンジ色の見た目に似合わない強烈な辛さの中に、糖度も約12度あるなど豊かな香りとうまみが特長で、焼いたり、おひたしにしたりと様々な食べ方が楽しめる。

しかし、同市で弥平とうがらしを栽培している農家はわずか3軒しかなく、市場に流通するほどの収量はない。一味やチリソースなどに加工されて市内の農産物直売所で販売されている程度で、「伝統野菜」という看板を背負ってはいるものの、知名度も商品力も弱いのが実情だ。
同課の藤本駿平主査は「まずは、市民に存在を知ってもらおう」と、栽培体験を企画。昨年、市役所庁舎のバルコニーにプランターを置いて2株育て、豊かに実った実から種を取った。その種を今年4月に植えたところ、100株ほどの芽が元気に顔を出した。
100個のポット苗は6月に「育てやすさが魅力」と市内の学校や企業に配布し、育ててもらう計画だ。収穫時期の8月~11月頃には、配布先で食卓をにぎわせてくれると期待する。家庭菜園で終わらせず、調味料や飲食店での利用など、段階的に活用を進めていく予定という。
松浦加代子市長は「とにかく辛い。でもマイルドな甘さもあるので、他のトウガラシとは違う」と感想を語り、藤本主査は「いずれは『万願寺とうがらし』(万願寺甘とう)や『聖護院かぶ』のようになって、農業として成立すればうれしい」と意気込む。手のひらに乗るポット苗から、大きな夢が育とうとしている。